高齢者に対する嚥下リハビリテーション(以下:嚥下リハ)の効果や嚥下障害の予後予測因子を検討した.対象は,当院入院中に嚥下障害が疑われて,当科嚥下外来を紹介された患者の中,嚥下リハを行った65歳以上の嚥下障害患者80例とした.嚥下リハ後の経口摂取状況により経口自立・非経口自立群に分けて,当科初診時の嚥下内視鏡検査所見,年齢,性別,重複疾患の有無,肺炎や認知機能低下の有無,ADLについて重回帰分析を行った.嚥下リハの結果,47.5%は安定した経口摂取が可能となった.嚥下リハでの改善には,嚥下内視鏡検査における「声門閉鎖反射や咳反射の惹起性」や「咽頭クリアランス」が関与していたが,咽頭期が保たれていても経口摂取にいたらない症例も少なくなかった.重回帰分析では,ADLと肺炎の有無が関係していた.高齢嚥下障害患者の嚥下リハには,予後予測と患者の全体像を把握した介入が必要である.