2018 年 59 巻 4 号 p. 334-341
音声訓練に用いられるチューブ発声は,口唇周辺部の皮膚振動感覚が重要なフィードバック要素とされている.しかしながら,チューブ発声時の皮膚振動を客観的に計測してフィードバックできる方法はまだない.そこで,本研究では,チューブ発声時の上口唇皮膚部の皮膚振動について,加速度センサを用いた計測を行い,その計測値を利用したバイオフィードバック(BF)システムを開発した.非音声障害者を対象に,上口唇皮膚部の皮膚振動をより大きくすることを意識させたチューブ発声50回を行い,BFあり条件とBFなし条件の2条件で,主観的評価と客観的評価の経時的変化について検討した.その結果,BFあり条件では,主観的評価にも客観的評価にも有意な経時的変化が認められた.客観的指標に基づいたBFシステムを用いた音声訓練の意義や可能性が示唆された.