音声言語医学
Online ISSN : 1884-3646
Print ISSN : 0030-2813
ISSN-L : 0030-2813
症例
自然で無意識な発話への遡及的アプローチにより,吃音重症度と不安状態改善を認めた成人吃音の1症例
荻野 亜希子小内 仁子平田 暢子新明 一星都筑 澄夫渡嘉敷 亮二
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 60 巻 2 号 p. 155-161

詳細
抄録

吃音とメンタルヘルスの問題,特に不安症群との合併については複数指摘がなされているが,進展段階を基準とした改善例の報告は国内外でもわずかであり,心理検査の数値の変化とともに論じた報告は例がない.今回,進展段階第4層の吃音者である19歳女性に対して,年表方式のメンタルリハーサル法を含む,自然で無意識な発話への遡及的アプローチ(RASS)理論に基づいたリハビリテーションを行った.初診後約5ヵ月時の再評価において吃音症状の一つである回避が消失し,進展段階の重症度改善が示唆された.心理検査では不安全般および社交不安の軽減を認めた.吃音検査においては,吃音中核症状頻度が減少し,発話量が増大した.RASS理論に基づく介入によって行動面・認知面・発話面の症状改善が図られた可能性が示唆された.今後は長期的経過および複数症例の蓄積および検討が必要と考える.

著者関連情報
© 2019 日本音声言語医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top