2019 年 60 巻 3 号 p. 196-204
小児の人工内耳は,新生児聴覚スクリーニングの普及やその聴取,言語力などの有効性から増加の一途である.またそれに伴い,さまざまな難しい症例に施行され,特に内耳形態異常症例に人工内耳が応用されている.今回は,当科で経験した内耳道狭窄を伴う人工内耳装用5症例について検討した.その結果,マップでは全症例でパラメータを変更し電荷量を増やす必要があった.全症例で音知覚が得られたが,反応が出るまでに長期間を要する者が多く,最長で4年半掛かった.全症例で語音聴取は不良であり,トータルコミュニケーションを使用していた.術前に聴覚反応が少しでもあれば人工内耳の適応と考えられた.内耳道狭窄を伴う症例の人工内耳植込み術にあたっては,反応が見られるまでに時間が掛かること,術後反応不良の可能性があること,人工内耳を介した会話には限界があることなどの術前の十分なインフォームドコンセントと術後早期の適切なマップ作成が必要であると思われた.