音声言語医学
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原著
過緊張性発声障害患者における発症の主観的誘因と背景についての調査
平田 暢子渡嘉敷 亮二小内 仁子荻野 亜希子新明 一星原田 紗衣井上 瞬
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2019 年 60 巻 3 号 p. 220-229

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抄録

機能性発声障害の定義は臨床家間でも一致しておらず,発声習慣,発声の仕方の問題に情緒的要因が重なっているともいわれている.そこで,当院受診の機能性発声障害患者65例の発症の背景について調査した.対象者はすべて過緊張性発声障害を呈していた.調査項目は,発症時期,発症の主観的誘因,発症前後半年以内のライフイベント,STAIとし,声帯に器質的異常を認めた32例(コントロール群)と比較した.その結果,20代での発症が約半数を占め,STAIで段階Ⅳ以上が半数以上と高い不安傾向を認めた点は両群間で共通していた.発症の主観的誘因では,対象群で精神的ストレスが高かった.また,対象群では主観的誘因は「特にない」と答えた者が32%存在し,その中の64%がストレスを誘発するライフイベントを経験していた.機能性発声障害のうち過緊張性発声障害患者の背景には無自覚なものも含め精神的ストレスの関与があることが示唆された.

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© 2019 日本音声言語医学会
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