音声言語医学
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原著
幼児のカタカナ読み書き習得に関与する文字特性の検討
樋口 大樹奥村 優子小林 哲生
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2019 年 60 巻 3 号 p. 230-237

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抄録

本研究では,カタカナ読み書き習得に及ぼす文字特性の影響を明らかにすることを目的として,国立国語研究所が公開している5歳児のカタカナ読み書き正答率順位と各文字特性(絵本における文字頻度,五十音表順位,視覚的複雑度,ひらがな読み書き正答率順位)との関連を検討した.その結果,カタカナ読み正答率順位は文字頻度,ひらがな読み書き正答率順位と弱いが有意な相関を示し,絵本によく出てくる文字のほうが習得されやすい傾向があることが示された.また,カタカナ書き正答率順位は文字頻度,五十音表順位,ひらがな読み書き正答率順位と弱い相関を示した.さらに,これらの文字特性がカタカナ読み書き正答率順位を有意に予測するのか順序ロジスティック回帰分析を用いて検討したところ,文字頻度がカタカナ読み正答率順位を有意に予測していた.一方,カタカナ書き正答率順位を有意に予測する文字特性は検出されなかった.また,モデルの的中率は読み書きともに50%程度とやや不良だった.同一手法を用いてひらがな読み書きと文字特性との関連を検討した先行研究と比較すると,相関値,モデルの的中率ともに低い傾向であり,カタカナ読み習得には絵本における文字への接触が関与するが,その関与度合いはひらがなと比較すると小さいことが示唆された.

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© 2019 日本音声言語医学会
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