2019 年 60 巻 4 号 p. 286-294
文献レヴューを基に現在世界と日本で流通しているdysarthriaの評価について概観する.dysarthriaの評価は,聴取者の聴覚印象と逸脱を生み出す発声発語器官の神経学的・運動学的評価から構成される.伝統的アプローチは,病歴,発話特徴,発声発語機能検査,口腔顔面と身体観察による神経学的所見から診断とサブタイプの同定を行う.総合的検査法は,聴覚心理学的検査,発声発語機能検査,発声発語器官の観察からなり,機器を必要としない.機器を用いた評価には,出力音声の音響分析,声道空気力学的な計測,発声発語器官の生理学的・運動学的解析がある.総合的検査法は,評定尺度法による評定が主で,定量化に関しては制約がある.機器を用いた評価は病態理解と定量化ができるものの,臨床場面で普及していない.機器を用いた評価と定量的評価の普及には,発話という複雑な現象を説明するパラメータ設定とコスト削減が課題となる.