音声言語医学
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原著
母音/i/における横舌筋作用の有限要素法を用いた検討
高野 佐代子松崎 博季元木 邦俊
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2020 年 61 巻 1 号 p. 41-49

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抄録

母音発話における各種の舌筋の活動について数多くの検討がなされてきたが,舌の内部変形の特徴については観察が困難なために考慮が少なかった.本研究では変形を可視化するために開発された,黒い線を付加できるタギングシネMRI(tagged-cine MRI)のデータ(高野ら,2006)に基づいて,舌の内部変形の特徴を考慮したうえで舌モデルを構築し,有限要素法のシミュレーションにより特に横舌筋の効果について検討する.
これまでの研究により,母音発話/ei/(日本語2モーラ)のタギングシネMRIにおいて,舌は前後および上下に4つの部位に分けて考えることで最も簡単に解釈できることが報告されている(高野ら,2006).すなわち,前部は前方移動と中央方向への圧縮,後部は前方移動と左右方向への膨張が見られ,特に前方上部(舌端部)は前後方向よりも上方向への移動が顕著であった.さらに,前方上部は後方下部(舌根部)よりも動き始めるのが早く,速度および移動距離が最も大きかった.これは舌の構造から考えると,横舌筋前部の関与が推測された(高野ら,2006).
そこで本研究では,母音/i/における舌端部の運動について,舌を前後および上下に分割した立方体4要素の舌モデルを構築し,有限要素法によるシミュレーションを用いて前部横舌筋の作用について検討した.その結果,母音/i/では前部横舌筋の筋活動に相当する収縮力の発生により,舌端点は中央方向への圧縮を伴い,より早いタミングで動き出し,速度も速く,移動距離も大きくなるという傾向が確認された.

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© 2020 日本音声言語医学会
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