二重障害仮説(DDH)では,読み困難のある児童を音韻認識障害(PAD)群,自動化能力障害(NSD)群,二重障害(DD)群の3群に分類でき,DD群が最も重い読み困難を示すと報告されている.しかしDD群は最も重い読み困難を示さなかったという報告も複数あり,その理由の一つに文字言語体系の差が挙げられている.本研究では,小学1年生から6年生の日本語話者児童795名のうち,異なる文字言語体系である「ひらがな」と「漢字」に読み困難のある児童を対象に,DD群の読み成績について検討した.その結果,ひらがなの読み困難群においてDD群は最も重い読み困難を示さなかったが,漢字の読み困難群においては最も重い読み困難を示した.本研究の結果からはDD群の読み困難度は文字言語体系によって影響を受けることが示唆された.また,DDHでは分類できない読み困難のある児童を複数認めたことから,DDHで想定している認知障害以外の認知能力も考慮すべき可能性が示唆された.