本研究の目的は,日本語を母語とする特異的言語発達障害児(SLI児)の発話の非流暢性の特徴を動詞と項,付加詞との関係から明らかにすることであった.対象児はSLIの典型例として報告されてきた学齢期の女児1名であった.動詞を述語にもつ文のみを対象とし,対象児の12歳8ヵ月〜10ヵ月の自然発話に見られた非流暢性を,非流暢性の頻発期である3,4歳の定型発達の幼児と比較した.その結果,1)言い直しが多いという点で両者は類似していたが,非流暢性が生じた文の割合は,SLI児のほうが有意に高かった.また,2)動詞の言い直しが見られた文の割合は,SLI児のほうが幼児に比して高い傾向にあり,3)文産出後に項または付加詞の付加が見られた文の割合もSLI児は幼児に比して有意に高かった.これらの結果について,文産出にかかわる言語処理と言語知識との関係で考察し,最後に,本研究の臨床的意義について述べた.