2020 年 61 巻 2 号 p. 188-195
吃音の評価では,吃音者が使用している工夫・回避を詳細に把握すること,吃音者が抱く場面に対する恐れを確認することが必要である.しかしながら,吃音検査法(第2版)および進展段階による評価では,観察のみでは評価が困難な症状である工夫・回避をどのように確認するかについての具体的な方法は記されていない.また吃音検査法(第2版)と進展段階では,吃音者の日常生活場面での恐れについての評価項目はない.本症例研究では,自由会話場面の観察では工夫・回避を確認できず,吃音検査法(第2版)と進展段階では日常生活場面に対する恐れの状態が評価できなかった1症例に対し,吃音質問紙を実施した.その結果,使用していた工夫・回避と恐れの強い日常生活場面を評価することが可能となり,吃音に改善が認められたことから,本症例研究では吃音質問紙で「工夫・回避」と「日常生活場面での恐れの状態」を評価することの重要性が示された.