2020 年 61 巻 4 号 p. 303-308
成人領域の高次脳機能障害で見られる頭頂葉機能障害と推察された小児2症例を提示した.2症例の音声言語の発達はほぼ正常範囲にあったが,読み書きにおいてさまざまな症状を呈していた.これらの症例の症状の分析には,成人高次脳機能障害領域の検査バッテリーが有用であった.言語聴覚士の養成校では,しばしば成人領域,小児領域という2分割の講義・演習が進められる傾向にあるが,言語聴覚臨床には小児や成人の垣根はないと考える.お互いの得意分野の知恵を持ち寄り,評価・訓練に有用な情報はすべて活用して,さまざまな高次脳機能・発達の課題を併せ持つ子どもたちをどう支援するのか,という議論を進めることが重要である.