音声言語医学
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原著
ケプストラム分析用の日本語課題文の検者内・検者間信頼性と課題文の再現性
―健常若年成人話者における検討―
城本 修宮地 隆世奥田 あずさ阿部 千佳
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2020 年 61 巻 4 号 p. 315-330

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抄録

【目的】ケプストラム分析に適していると思われる日本語課題文を試作し,健常若年成人話者の音読音声について,ケプストラム分析とスペクトラム分析を行い,分析の検者内・間信頼性と課題文の再現性から,試作した日本語課題文の有用性を検証する.
【研究協力者】話者:健常若年成人男女各30例(平均年齢22.7歳,SD 4.5歳)
検者:ケプストラム分析とスペクトラム分析の経験がない学生3名
【手続き】上記の話者を対象に,2日間で計4回,持続母音/a/,/i/と試作した種類の異なる日本語課題文6文をランダム順に音読してもらい,デジタル録音した.録音された音声をADSVプログラム(Analysis of Dysphonia in Speech and Voice program)を用いて,cepstral peak prominence(CPP),Cepstral/Spectral Index of Dysphonia(CSID),L/H spectral ratio(L/H ratio)について3名の検者がそれぞれ分析した.
【結果】持続母音,各課題文におけるCPP,CSID,L/H ratio測定値は,高い検者内および検者間信頼性(ICC=0.65–0.999,0.872-0.998)を示した.また,各測定値は全4試行間でも同一検者による高い再現性(ICC=0.763-0.948)を示した.さらに,持続母音と各課題文における各測定値平均は,母音の種類や課題文の種類によって有意差が認められ,さらに発話者の性差による差異も認められた.
【結論】健常若年成人話者のケプストラム分析とスペクトラム分析の高い検者内・間信頼性と課題の高い再現性から,試作した日本語課題文の有用性が高いことが示された.さらに課題文の種類や発話者の性差による各スペクトラム指標およびケプストラム指標の差異が認められた.今後は,これらの課題文の種類や発話者の性差による差異が,高齢健常者や音声障害者においても同様に認められるか検討することが望まれる.

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© 2020 日本音声言語医学会
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