誤嚥性肺炎は高齢になるほど発症率,死亡率が高く,医療,介護,福祉の現場,さらには日常生活の場における予防の取り組みが急務となっている.高齢になっても誤嚥を回避し,安全な経口摂取を継続していくためには正常な嚥下機能と咳嗽機能の維持が求められる.今回われわれは「加齢による呼吸機能低下に伴い,随意咳嗽と咳反射テストの成績が低下する」という仮説を立て,誤嚥性肺炎による死亡率が増加する50〜80歳代の健康な女性を対象として研究を行った.
結果として,呼吸機能,随意咳嗽と咳反射テストの咳の最大流量に年齢による差はなかった.80歳以降では咳反射テストの潜在時間延長,咳の回数減少が顕著であった.
以上より加齢による影響が出やすいのは咳反射テストの潜在時間と咳の回数であり,随意咳嗽,咳反射テストの最大流量や聴覚的印象である咳の強さ,弱さの指標では加齢による気道防御機能の変化を捉えにくいことが示唆された.