音声言語医学
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総説
ケプストラム解析による音響分析の有用性
―エビデンスと今後の展望―
水田 匡信土師 知行阿部 千佳
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キーワード: 音響分析, ケプストラム, CPP, CSID
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2021 年 62 巻 3 号 p. 186-194

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抄録

ケプストラム解析に基づく音響分析(ケプストラム音響分析)は音声信号の個々の周期の同定を必要とせず,会話音声にも適用でき,また重度嗄声も解析できると考えられる.ケプストラム音響分析の指標であるCPP(cepstral peak prominence)とCSID(cepstral spectral index of dysphonia)の妥当性は,主に聴覚心理的評価との相関解析と,嗄声の有無の診断能に関するROC(receiver operating characteristic)解析により検証されており,英語や日本語を含め多言語において,持続母音だけでなく会話音声での高い妥当性が報告されている.また分析対象とする音声波形の範囲により算出される値が異なる可能性(検査の信頼性)があるが,今回重度嗄声例を用いて検証したところ,CPP,CSIDでは重度嗄声例においても信頼性が保たれることが確認された.このようにケプストラム音響分析は持続母音と会話音声に対して高い妥当性を有し,また重度嗄声に対しても高い信頼性を有すると考えられ,日常の音声障害診療において広く使用されることが望まれる.

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© 2021 日本音声言語医学会
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