1)ヒト声帯黄斑内の細胞は,分化多能性をもった組織幹細胞であり,ヒト声帯黄斑は,幹細胞ニッチであると考えられている.
2)ヒト声帯黄斑内の組織幹細胞では,嫌気的解糖が行われており,好気的解糖に続く酸化的リン酸化は抑制されていることが示唆された.
3)ヒト声帯黄斑内の細胞には異種性と階層性を認める.異種性・階層性をもった各細胞では,エネルギー代謝が異なっていることが示唆された.
4)ヒト声帯黄斑内の細胞では,代謝プログラムによる組織幹細胞機能の制御,すなわち未分化性・幹細胞性を維持するエネルギー代謝が行われていることが示唆された.
5)ヒト声帯組織幹細胞の幹細胞性維持,分化における系列決定に関しては不明な点が多く,代謝プログラムを含めた幹細胞システムのさらなる解明が待たれている.
6)ヒト声帯黄斑の組織幹細胞システムが解明され,幹細胞システムを人為的に制御できれば,声帯再生医療の新たな治療法になる可能性がある.