2022 年 63 巻 1 号 p. 13-22
慢性期失語症例に対し,仮名1文字の書取訓練(40分/回,計35回,約4ヵ月半)において単音節語からなる漢字1文字をキーワード,漢字1文字を初頭に含む複合語等をヒントとして用いた.その結果,平仮名44文字中,書取可能な文字数が9文字から31文字に増加した.仮名1文字の書取には,キーワードの書字やヒント想起の可否がかかわっていた.仮名1文字の書取の成否に影響を及ぼす文字特性を検討した結果,キーワードとして用いた漢字の画数が有意であった.書取可能となった平仮名31文字を組み合わせて2文字単語20語の書取訓練(40分/回,計14回,約2ヵ月)を実施した結果,書取可能単語数は3語から17語に増加した.両訓練は,モーラ分解・抽出の必要がない単音節の漢字1文字単語をキーワードとして用いたため,音韻処理障害のある本例に有効であった.訓練に際しては,漢字の画数に留意し,文字数の少ない単語を用いる必要性が示された.