早口言語症の症状を示す10歳の男児を対象に,発話速度コントロールを目指した認知・行動アプローチによる介入を行った.認知・行動アプローチの方法に従い,最初にモニタリング機能に焦点を当てた指導を行ったうえで,発話速度を低下させた話し方の指導に移った.介入の6ヵ月間経過後に,「記憶した物語再生課題場面」で総非流暢性頻度が有意に低下したこと,開始時に実施した日本語版早口言語症チェックリストver. 2の得点が21点から9点へと低下したことから,指導の終結を判断した.発話をシンプルにすることで伝わりやすくなるという気づきのあった後,言語形式化が良好になり非流暢性頻度が低下したことが推測される.一方,発話速度低下が測定値からは認められず,その解釈については注意が必要である.本研究の結果からは,認知・行動アプローチに含まれるモニタリングスキル指導が非流暢性頻度低下に影響し,早口言語症改善に寄与した可能性があることが推測されるが,今後は,早口言語症のある発話において妥当な速度の測定法を検討したいと考える.