2022 年 63 巻 4 号 p. 255-261
加齢性声帯萎縮に対する音声治療の効果について検討した.対象は21例で,年齢は55〜80歳(平均69.7歳),男性14例と女性7例で,全例に音声治療(vocal function exercise等)を実施した.GRBASの合算値と全個別項目,MPT,音響分析(jitter),VHI-10スコアが音声治療後に有意に改善し,加齢性声帯萎縮に対する音声治療の有効性が示された.また,音声治療によるVHI-10スコアの改善と年齢・性別等の個人因子には,いずれも有意な相関性を認めなかったが,個人因子からVHI-10スコア改善を予測するためロジスティック回帰分析による検討を実施したところ,治療前の声門間隙の程度が軽度という個人因子がある場合にVHI-10スコアが改善しやすいという回帰性が示された.本検討により,音声治療の施行前に治療効果の予測をする因子として,声門間隙の程度が候補になる可能性が示唆された.