2023 年 64 巻 1 号 p. 1-9
本研究では,GRBAS尺度,Consensus Auditory-Perceptual Evaluation of Voice(CAPE-V)といった聴覚心理的評価の音声課題や評価尺度の差異が嗄声の評価にどのような影響を及ぼすかについて検討した.音声課題には「持続母音」または「持続母音+短文」を用い,評価尺度としては,GRBAS尺度で用いられるVerbal Rating Scale(VRS),およびCAPE-Vにて用いられるVisual Analog Scale(VAS)を用いた.評価者は10年以上の音声障害診療の経験がある耳鼻咽喉科医師2名と言語聴覚士1名の3名で嗄声度(G)ないしoverall severity,粗糙性(R)ないしroughness,気息性(B)ないしbreathinessの評価項目について検討した.
VRSの評価では「持続母音+短文」の信頼性のほうが高かった(ICC(2,1)=0.803〜0.925).またVASの評価ではroughnessを除き短文を加えたほうの信頼性が高かった(ICC(2,1)=0.904,0.937).VRSよりもVASの評価がより高い信頼性を認めた(ICC(2,1)=0.677〜0.896,0.803〜0.937).VRSの気息性(B)とVASのoverall severity,breathinessの評価で「持続母音+短文」を有意に重く評価する傾向が見られた.すなわち,短文が音声課題に加わると聴覚心理的評価に影響を及ぼす可能性があると考えられる.