音声言語医学
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歌声の調節機構
平野 実
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1970 年 11 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

歌声における声区, ピッチ, 強さの調節機構を, 職業的声楽家について研究した.研究には, 喉頭筋筋電図と声帯の高速度映画撮影を用いた.
声区は主として声帯筋によって調節される.声区が重い程声帯筋の収縮は強い.側筋と横筋は声区の調節に当たって声帯筋を助ける.したがって, 重い声区では声帯は厚く, 粘膜波動は著明で声門閉鎖期が長く, 開閉速度率が大きい・前筋は声帯筋の拮抗筋として声区に影響を与える.しかし, 第一義的の声区調節者ではない.
一般に, 声帯緊張筋および内転筋の活動はピッチの上昇とともに増加する.しかし, 軽い声区の高い音域では, これらの筋のピッチの調節への関与度はより小さい.
重い声区の低い音域では, 声の強さは主として内転多によって調節されるが, 軽い声区の高い音域では主として呼吸筋によって調節される.
声区, ピッチ, 強さは生きた人間においてはお互いに全く独立した因子ではない.

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