音声言語医学
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失語症検査で観察された保続反応
相野 田紀子榎戸 秀昭鳥居 方策
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1984 年 25 巻 3 号 p. 181-188

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抄録

他の合併症がなく, 発症後1ヵ月以上を経過した左半球損傷による失語症患者64例 (男49例, 女15例) が, 標準失語症検査 (SLTA) および失語症鑑別診断検査 (DDTA) の自発発話, 復唱, 音読で示した保続反応 (pers.) を検討した.その結果, 以下の知見を得た. (1) 全症例の84%がいずれかのタスクでpers.を示した. (2) 呼称時のpers.の出現率は失語症検査成績および呼称成績と負の相関を示した. (3) 発症後1~3ヵ月の群では, 4ヵ月以上の群よりpers. (呼称時) を示した症例が有意に多かった. (4) 個々の症例の発症後の期間が増大すると, pers. (呼称時) の出現率は低下した. (5) CVA症例の約70%が, 呼称時にpers.を示した. (6) SLTAでは全体的pers.が部分的pers.より有意に多く認められたが, DDTAでは差がなかった. (7) pers.は, 失語症患者が示す反応を質的側面から把握する手がかりの1つとなるのではないかと推測された.

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