音声言語医学
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失語症者の記銘力障害
―情報処理プロセスからのアプローチ―
野島 啓子藤田 郁代早田 裕子
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1985 年 26 巻 2 号 p. 167-173

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抄録

本研究では失語症者の記銘力障害について検討するため, 言語的材料を刺激とした聴覚的記銘・復唱・視覚的記銘の3課題と, 非言語的材料を刺激: とした無意味図形記銘課題を, Broca・Wernicke両失語群と健常者を対象に実施した.失語群には言語的材料として呼称可と呼称不可の2種の材料を用意した.その結果は以下のとおりである. 1) 言語的材料の記銘課題では失語群の記銘量は健常者より有意に低かったが, 非言語的材料の記銘課題では両者に有意な差はなかった.
2) Wernicke失語群は聴覚的記銘課題において呼称可の材料の記銘量が不可の材料の記銘量より有意に多かった.
3) 各テスト間の相関のパターンの違いから, 健常者は言語的材料を用いた記銘課題において音響的符号を主に用いるが, 失語症者は意味的符号・視覚的符号等の音響的符号以外の符号を用いている可能性が示唆された.

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© 日本音声言語医学会
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