音声言語医学
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音声外科の立場から
―声帯への手術侵襲と術後の声帯振動―
湯本 英二
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1988 年 29 巻 2 号 p. 203-207

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抄録

過去11年間に入院の上でおこなった音声外科的治療の内訳は喉頭微細手術が366例, 喉頭枠組みの手術29例, 間接喉頭鏡下手術11例, その他4例と圧倒的に喉頭微細手術が多かった.そこで, 声帯に加えた微細な手術操作が声帯振動に及ぼす影響を高速度映画撮影によって検討した. (1) 正常例: 下唇, 遊離縁とも振動は対称的であった.下唇は遊離縁となって正中で左右が合した後, 速やかに外側へ移動した.その後, 左右の遊離縁が離開を始めるまで外側に留まり, 遊離縁の外方への移動中に内方への動きを開始した. (2) 声帯操作例: 声帯膜様部の上面あるいは下面のどちらに創を作製した場合でも, 操作側遊離縁の振動は, 振幅が小さくなり, 位相は早くなる場合が多かった.操作側下唇の振動は, 外方への動きが遅くなり, また, 声帯上面の創でも大きいときは下唇の消失することがあった.声帯下面に創を作製した場合, 健側遊離縁の振動も不規則になる場合が観察された.

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© 日本音声言語医学会
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