音声言語医学
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発語失行症における韻律異常
―持続時間の異常―
日暮 嘉子正木 信夫辰巳 格笹沼 澄子
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1988 年 29 巻 4 号 p. 307-315

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抄録

ほほ純粋な発語失行症患者1例に, 1拍発話「差」から, 9拍発話「魚屋さんからの」を, 単独で, および文中に埋め込んで発話させ, 発話の全体長と各拍の持続時間を計測して, 以下の知見を得た.
(1) 単独, 文中発話とも, 発話の全体長は, ポーズを除いても, きわめて長く, 発話が遅い.平均値で見る限り, 全体長は拍数に比例して増加するが, 発話ごとのバラツキが大きい.
(2) 発話の第1拍 [sa] の持続時間は, 2拍発話までは, 健常者と同様に, 単独, 文中発話とも減少するが, 2拍を越えると増加する.
(3) 発話試料 [sakana・・・・・・…] のセグメント [ak] と [an] の持続時間の関係をみると, 文中発話では先行セグメントの持続時間の変動が, 後続セグメントにより相殺されるのに対して, 単独発話ではこうした調節は行われていない.
(4) ポーズは, 文法項目の切れ目に挿入される.
これらの結果に基づき, 発語失行症患者の韻律異常について検討した.

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