音声言語医学
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後天性難聴児の言語発達
―症例を通して―
小出 貞子城本 修庄司 治子大庭 美智子平野 実
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1988 年 29 巻 4 号 p. 331-336

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抄録

2歳8ヵ月に発症したと思われる, 後天性難聴男児に対して, 3歳5ヵ月から, いわゆる聴能訓練を行い, 4歳7ヵ月で, 遊びを中心とした指導に変更した.
この症例に対する言語指導を通して, 次のことがわかった.4歳1ヵ月では, 1語発話が中心で, 言語行動の機能は物の命名や模倣が多かった.構音は全体に明瞭度が下がっていた.4歳7ヵ月で指導方針を変更した.4歳8ヵ月から4歳10ヵ月頃は, 指導方針の変更にとまどったのか, 言語表出能力が全体に低下した.その後は, 2語発話が増え, 構音も [k] [t] の分化がすすみ, 助詞の誤りも減少してきた.そして言語行動の機能は, 質問や意志が増えた.
後天性難聴児の言語指導では, 遊びを中心とした指導において, 子ども全体を伸ばしていくことが, 生きたことばを獲得していくために大切であると考える.

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