音声言語医学
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失語症の言語治療
藤田 郁代
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1988 年 29 巻 4 号 p. 359-367

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抄録

最初に, 失語症の言語治療に関する研究の流れを整理した.次いで, 著者らが開発した構文の治療をBroca失語10人, Wernicke失語5人, 混合型失語3人, 全失語7人に実施した結果を分析し, 次の結果を得た.
(1) 各失語群の構文の理解力と産生力は本治療法が基づく階層に従って崩壊しており, 回復もその階層に従って進んだ.
(2) 治療後には, 対象者全体では聴理解84%, 読解54.2%, 産生70.8%の者の構文能力のレベルが上昇した.レベルが上昇した人数は産生だけに失語のタイプによる差が存在した.
(3) 構文の理解力と産生力の到達レベルは失語のタイプによって異なった.
(4) 構文の理解力と産生力がともに回復した者は, 理解力だけ回復した者より到達レベルが高かった.
以上の結果から, 今後の失語症の言語治療研究の課題を検討した.

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© 日本音声言語医学会
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