1989 年 30 巻 4 号 p. 360-367
音声言語という複雑な機能を駆使するヒトでは, 聴覚を介した何らかの喉頭制御機構が存在するものと考えられてきたが, なお証明されるに至っていない.そこで今回著者らはそのような反応系が存在するかどうかについて一連の実験を行った.健常成人に持続発声を指示しつつ, 繰り返し音刺激を加えた.その際, 内喉頭筋より筋電位を導出, 加算処理を行い, 音刺激に対する喉頭の反応について検討した.その結果, 音刺激により内喉頭筋に一定の短潜時を持った反応が認められた.それらの反応は大脳を介さないいわゆる“反射”であろうと考えられた.内喉頭筋での反応は輪状甲状筋に最も早く出現し, ついで右外側輪状披裂筋, 左外側輪状披裂筋の順であった.また, 他の刺激に比し, 音刺激が最も安定した反応を誘発した.