音声言語医学
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聴覚障害児の音声言語獲得に関する研究
―9歳の壁を打破する教育理論開発の試み―
森 寿子
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1990 年 31 巻 2 号 p. 195-208

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抄録

聴能訓練法による早期言語教育で, 9歳の壁を打破することを目的として, 15年間に391例の聴覚障害乳幼児に言語指導を行い, 147例 (38%) では, 9歳の壁を打破できた.聴能訓練法によって9歳の壁を打破するためには, 次の事が重要であった.
(1) 3歳頃までに音声言語獲得に必要な「聴覚―音声回路」を確立し, 聴覚的言語理解力を年齢相応に獲得させる. (2) 6歳頃までに音声言語の能力を年齢相応に獲得させる. (3) このためには, 訓練を受ける子供の個体条件の的確な評価と音声言語獲得に影響を与える教育的諸条件の整備が必要であった. (4) 以上の指導がうまくいき, 6歳頃までに年齢相応の音声言語力と言語性知能を獲得して就学させれば, 就学後特別な訓練を行わなくても, 9歳の壁は打破できた.

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© 日本音声言語医学会
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