音声言語医学
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側音化構音の動態について
―エレクトロ歯冠パラトグラフによる観察―
加藤 正子
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1991 年 32 巻 1 号 p. 18-31

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抄録

「い」列音, 拗音, 「さ」行音にみられる側音化構音の構音動態をエレクトロ歯冠パラトグラフにより観察した.対象は側音化構音を示した10例 (機能的構音障害者5例, 口蓋裂患者5例) であり, 舌と側方歯ならびに硬口蓋の接触様式を正常構音例と比較して以下の知見を得た.
1.側音化構音時, 舌は硬口蓋ほぼ全体と呼気非流出側の側方歯咬合面および口蓋側面に完全に接触していた.
2.母音/i/ならびに摩擦音が側音化構音の場合, 呼気流出側の側方歯咬合面に舌は接していなかった.口蓋側面は最後臼歯に舌接触はみられず最後臼歯の前方臼歯に接触が認められた.
3.破裂音, 弾音が側音化構音の場合, 全ての側方歯に舌は接していたが, 接触は呼気非流出側に偏位していた.
4.側音化構音は舌背で硬口蓋を閉鎖した状態で, 呼気が最後臼歯口蓋側面に沿って口腔に入り舌縁と最後臼歯の前方臼歯の口蓋側面あるいは咬合面口蓋辺縁で音を産生した後, 呼気は咬合面を抜け歯列頬側部から, すなわち口腔の正中ではなく側方から流出する構音障害であることが明らかになった.

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