音声言語医学
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精神発達遅滞児における意図的伝達行為の発達とその認知的前提に関する研究
小山 正
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1991 年 32 巻 2 号 p. 185-197

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抄録

本研究では, 27例の精神発達遅滞児を対象として, 意図的伝達行為の発達過程において, 言語による伝達が出現するまでの主たる伝達手段となる行為の発達とその認知的前提について検討した.認知発達の評価には新版K式発達検査の認知・適応領域の項目を使用し, 以下のような結果が得られた.
1) 物へのリーチングや両手の協応性の発達, 2つの対象に注意を向けることと物と物との原初的な関連付け, 第2次循環反応的対象活動の定着, インデックスの理解の発達が, 注視, リーチング, 発声を手段とした意図的伝達の前提にあると考えられた.
2) クレーン, Showing, Giving, 指さしによる伝達行為の出現の前には, 物の永続性の確立, 目的-手段の関係理解, 容器の中の物を取り出すこと, 第3次循環反応的な対象活動, 示指を中心とした手指操作などの発達が共通してみられ, 指さしによる伝達行為の前提には, 入れる物と入れられる物の関係理解の発達があると考えられた.
3) 言語による伝達の認知的前提として, 表象の形成, 課題性を理解した上での目的達成のための固執性, 人差し指による対象の能動的な探索, 物の慣用的操作, 積木を積もうとすることにみられる高さへの興味や空間理解の発達が考えられた.

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