音声言語医学
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重度失語症者の非言語的象徴障害
竹内 愛子高橋 正萩生 正彦野中 弘河内 十郎
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1991 年 32 巻 2 号 p. 216-226

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抄録

重度失語症者の非言語的象徴障害を検討するために5種の非言語課題 (3種の象徴的課題と2種の空間的課題) を実施した.被験者は22名, 比較対照群は軽・中度失語群10名, 痴呆群14名であり, つぎの結果が得られた.
1) 重度群は軽・中度群に比較すると象徴的課題, 空間的課題ともに劣るが, 痴呆群に比較すると象徴的課題だけが劣っていた.
2) 失語群では象徴的課題と空間的課題に相関がみられた.しかし痴呆群にはこのような相関がなかった.
3) 言語様式との関連をみると, 3群ともに象徴的課題は言語の理解面との相関が高く, 空間的課題は書字や計算との相関が高い傾向があった.
4) 重度群の中で非言語能力が低いタイプは全失語, 重度ウェルニッケ失語, TCs, 最重度プローカー失語などであった.
5) 重度群の中で非言語能力が低い失語群の言語能力は, 非言語能力が低くない群に比べて読みの理解が有意に低く, また全体的な言語能力も低かった.
以上の結果にもとついて, 重度失語症者のコミュニケーションにおける非言語的手段の導入
の問題に言及した.

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