音声言語医学
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実用コミュニケーション中心のアプローチ
綿森 淑子
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1991 年 32 巻 2 号 p. 235-244

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抄録

体力・意欲・認知面でさまざまな問題をかかえる高齢失語症患者に適した治療的アプローチの条件としては, (1) 日常生活上意義のある実用的な課題を用いること, (2) 自発性を重視した方向づけを行い, 用いる手段を問わず自分で表現する能力を高めること, (3) 病院での訓練期間はできるだけ短期間とし, 地域・在宅でのリハビリテーションへの移行を重視すること, などがあげられる.
本稿では, まず失語症患者に比較的保たれている広い意味でのコミュニケーション能力についての研究を概観し, 次いで, 高齢者に適した実用コミュニケーション中心のアプローチを紹介した.親しい人達とのコミュニケーションを保つことは, 高齢者にとってQOL上最優先の課題といっても過言ではない.今後の高齢者人口の増加に対応するためには, 言語治療に携わるわれわれ自身の意識の改革と高齢者の特徴を踏まえたアプローチの開発・システム化に向けての一層の努力が必要である.

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© 日本音声言語医学会
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