1991 年 32 巻 4 号 p. 387-396
失語症患者229名 (64歳以下の若年群123名, 65歳以上の高齢群106名) を対象に, 非言語的な手段による伝達能力をも含む広い意味でのコミュニケーション能力と年齢との関係を検討する目的で, 実用コミュニケーション能力検査 (CADL検査) と失語症検査を施行し, 以下の知見を得た.
1) 失語症の重症度が軽~中度の患者においては, 両検査とも成績に年齢差はみられなかった.一方, 重度の患者では, 失語症検査の成績には年齢差が認められなかったが, CADL検査の成績には年齢差が認められ, 高齢群の成績が有意に低かった.
2) コミュニケーション・ストラテジーの利用に関しては年齢差は認められず, 高齢・重度群でも積極的なストラテジーを利用しており, その成功率も若年・重度群と変わらなかった.
3) 今回の結果は, 高齢・重度の失語症患者に適した訓練法開発の必要性を示唆するものと考えられた.