音声言語医学
Online ISSN : 1884-3646
Print ISSN : 0030-2813
ISSN-L : 0030-2813
両側側頭葉損傷による小児の聴覚失認の1例
玉井 ふみ加我 君孝
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 33 巻 2 号 p. 169-176

詳細
抄録

2歳7カ月時に罹患した単純ヘルペス脳炎により両側側頭葉聴覚領野を含む損傷を受け, 聴覚失認を呈した症例の聴覚および視覚を媒介とする言語の発達経過を報告した.
解剖学的にはCTスキャンで左右の聴皮質を含む上側頭回に低吸収域, MRIで左右の横側頭回に低信号域を認めた.電気生理学的には聴性脳幹反応 (ABR) 検査で末梢・脳幹の聴覚伝導路には障害を認めなかった.神経心理学的検査では精神発達の遅れ, 口腔器官の運動障害がみられた.行動反応聴力検査では域値の変動がみられるが, 軽度~中等度の域値上昇を示した.語音・環境音・音楽の認知, 音の方向定位の障害を認め, あまり改善しなかった.発症後音声言語の理解・表出が全く不可能となった.身振りサインや手話を用いた言語指導により文レベルでのコミュニケーションが可能となった.しかし, 指文字や文字の習得は困難であった.

著者関連情報
© 日本音声言語医学会
次の記事
feedback
Top