音声言語医学
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Pelizaeus-Merzbacher病の聴覚と言語能力―ABRでI波のみを呈した1症例―
玉井 ふみ加我 君孝
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1992 年 33 巻 4 号 p. 317-324

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抄録

古典型Pelizaeus-Merzbacher病と考えられる1症例について, 聴覚認知および言語の評価・指導を行い報告した.
神経学的検査では乳児期に発症した振子様眼振, 頭部・体幹・上肢の振戦, 腱反射亢進, 下肢の痙性麻痺の進行, 口腔器官の運動障害が認められた.解剖学的にはCTスキャンで軽度の脳室拡大, MRIT2強調画像で白質全体に高信号, また脳幹・小脳・脳梁の萎縮を認めた.電気生理学的には聴性脳幹反応検査でII波以降の消失がみられたが, 純音聴力検査では正常聴力を示した.語音認知検査では音場では問題がなく, 日常の語音の聴きとりに支障はなかったが, 受話器装用下では語音認知能力の低下が認められた.言語面は聴覚理解良好, 運動障害性構音障害のため発語は困難であった.16歳から文字盤を用いた文字言語表出指導を行い, 日常のコミュニケーション, 創作活動が可能となった.

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