スモールステップに基づく言語発達遅滞児の言語訓練において, 児の微細な反応やセラピストの働きかけの技法を明らかにするため, VTR録画を用い必要に応じフレーム単位の画像を抽出し, 1試行ごとに分析を行う方法を提示した.
このVTRによる1試行分析を音声記号未習得の3症例に実施し, 待機動作について検討した.待機動作とは, 言語記号の受・発信行動の成立途上に現れる行動でセラピストや刺激項ないし見本項の方に手をあげたり, 掌をヒラッと返したりするものである.VTR分析の結果, 3症例に受信 (理解) 課題と発信 (表現) 課題時に待機動作が観察された.待機動作は対象物に定位する志向反応の後, かつ目標とする反応の前に生じ, 受信や発信行動の体制化の重要な指標であることが明らかとなった.待機動作のように子供にみられる微細な行動を発見し, 確認し, 記述するためには, VTR分析は有効であると考えられる.