音声言語医学
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言語発達における模唱の機能 (1)
―健常児2児の分析から―
岩田 まな佃 一郎
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1993 年 34 巻 4 号 p. 342-348

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抄録

言語発達過程にみられる模唱の機能について, 1歳6ヵ月から2歳3ヵ月まで, 健常児2児の自由会話を調べ, 以下の知見を得た.
1) 模唱の発生頻度は1歳8~9ヵ月に全発語数の約20%と最も多くみられ, 以後漸減して2歳以降は2%以下になった.
2) 模唱を機能別に調べたところa) 大人に促された模唱, b) echolalia, c) 言語的に意味があると思われた模唱に分類できた.c) はさらに (1) 子供の意図, 行動, 感情等を大人が言語化したときに生じた模唱, (2) 音韻やリズムを楽しんで行った模唱, (3) 聞き返し, 返事, 命令のために使われた模唱, (4) ふざけて行った模唱に細分できた.
3) 月齢毎に模唱の機能の量的変化をみると, どの時期もc) が多く, その中でも (1) (2) の占める割合が多数を占めた.このことから (1) (2) は子供の模唱意欲を高め, ひいては言語発達に関与すると考えられた.一方a) は親の養育態度によるところが大きく, これがあまり続くと子供が拒否的になるようすが観察された.b) は量的にはごくわずかで, 健常児にはあまり大きな意味をもたないと考えられた.
4) 模唱の形態的変化を追跡すると, 初期は語の一部の模唱であったものが, 年齢が進むにつれ1語の模唱, 2語の模唱へと発達し, 同時に語形変化, 反対語, 模唱に別の語を付加するなどが現われ, 模唱を使って意思表示ができるようになっていった.さらに模唱を含んだ自発話へと発達し, これらから模唱がcommunication toolとして用いられていく過程が読み取れた.

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© 日本音声言語医学会
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