1993 年 34 巻 4 号 p. 380-386
声帯内注入術の普及につれ, 注入材料の注入後の変化について多く報告されてきた.そこで, 近年注入材料として, 使用されることの多い, 3%アテロコラーゲン (高研製) について, 実験的に反回神経麻痺を作製した犬声帯を用いて, 注入後の変化を, 病理組織学的に検討し, 以下の知見を得た.
1) 声帯遊離縁部に注入された例では, 周囲組織の反応が活発で, ホストの組織に置換される過程と推定される所見が認められたが, 筋層内注入された例では, 周囲に被膜形成もみられるなど, コラーゲンの組織内における安定性は, 注入部位によって異なると推測された.
2) 周囲にホスト由来の膠原線維からなる被膜を有して一塊として認められる場合は, アテロコラーゲンとしての免疫学的な特徴を保存した状態で残存していた.
3) 観察期間中, アテロコラーゲンに対する明らかな異物反応は認められなかった.