音声言語医学
Online ISSN : 1884-3646
Print ISSN : 0030-2813
ISSN-L : 0030-2813
乳児音声の感性情報認知における聴取者・状況依存性
志村 洋子今泉 敏
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 34 巻 4 号 p. 417-424

詳細
抄録

乳児の音声を通した感性情報表出能力の発達的様相を検討している.本研究では, 泣き声を含まない乳児の音声を対象に, 5段階評定尺度法により, 学生, 母親, 保母から成る3群の聴取者およびコンテキストを変動要因とした, 感性情報の聴取傾向を明らかにした.得られた結果は次の通りである.1) 乳児音声から聴取される感性情報には, 聴取者・コンテキスト間の多様性を超えて共通に聴取される特性と, 要因に応じて変化する特性が存在し, 発声の状況を表すコンテキスト依存特性は聴取者群によって違っていた.2) 依存特性は, 学生ではコンテキストの影響が線形予測可能な範囲にあるのに対し, 母親や保母では感性情報評価項目間の相関関係を変えるような傾向を示した.これらのことから, 聴取者, コンテキストの差異を超えた特性とともに, 聴取者の育児体験などの経験差が聴取・評価に影響をおよぼすこと, その影響の仕方は, 対象となった発声をどの様な状況下での発声とみなすか, に応じて評価を変える様式に現れることが明らかになった.

著者関連情報
© 日本音声言語医学会
前の記事
feedback
Top