音声言語医学
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高次脳機能検査 (老研版) による失語症患者と痴呆患者の比較
―痴呆の原因疾患との関係―
福迫 陽子綿森 淑子物井 寿子笹沼 澄子
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1994 年 35 巻 1 号 p. 8-18

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抄録

原因疾患の異なる2種の痴呆―アルツハイマー型痴呆 (DAT) と脳血管性痴呆 (VaD) ―における高次脳機能障害の特徴を失語症患者の成績との比較を通して明らかにすることを目的に, 見当識, 記憶, 言語, 視空間認知・構成面の20の検査から構成される高次脳機能検査 (老研版) を実施した.対象は失語症群93例, DAT群52例, VaD群39例である.痴呆各群と比べた場合の失語症群の特徴は言語面の低下および視空間認知・構成面の保存という点で共通していた.しかし, 見当識, および記憶面に関しては, 失語症群はDATとVaDとの比較の問でやや異なる結果を示した.すなわち, 見当識の得点はDATより高かったが, VaDとの間には有意差はなく, 記憶面の遅延後の情報保持量に関しては失語症群が最も高く健常者と遜色のない成績であったのに対して, VaD, DATの順に低下した.失語症とVaDとの鑑別という観点を主に考察を加えた.

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