抄録
3歳前後の初診時に音声記号の受信 (理解) 面は正常範囲で有意語が数語以下であった3症例を, 国リハ式〈S-S法〉言語発達遅滞検査の症状分類B群 (音声発信困難) のリスク児として把握し, 3年間の経過を報告した.
3症例とも初診時にコミュニケーション手段として身振りを使用しており, その後, 音声模倣により単音節の発信を, 次に文字などを補助にしながら主として音声模倣により異音節結合の発信を習得し, 4歳前には有意語が増加してB群には移行しなかった.しかし, 症例により多音節語の音形の習得や文字学習上の困難, 構音障害, 文章表現の未熟, プラグマティクスの問題, 学習障害への移行など, 発信行動習得過程における特徴や予後は異なる.
音声発信困難の要因をコミュニケーション態度, 構音操作のコントロール, 音韻操作などの観点から検討し, B群リスク児の予後や彼らに対する臨床的働きかけについて考察した.