母音発話時の口唇形状を単純化した図形を用いて, 視覚情報に基づく母音知覚機能を検討した.3名の発話者が日本語の5母音を発声したときの口唇形成の輪郭線から, 5母音の平均的な基準口形図形を作成した.この基準口形をもとにして, 図形の強調と同化の操作を加えることによって母音口形連続体を作成して, 母音の同定を求める知覚実験の資料とした.75名の被験者を対象として, 二者択一および五者択一の回答を求める実験を行った結果, いずれの場合においても, 母音口形連続体に対して, [i] , [a] , [u] の極端母音は高い正答率を示し, [e] は [a] への誤知覚が多いために正答率がやや低く, [o] は最も低い正答率を示した.3つの極端母音に対する範疇的な知覚判断の結果に基づいて, 母音の生成と知覚の成立に関する考察を行なった.