音声言語医学
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舌切除患者の構音訓練の経過
―舌接触補助床装着例について―
今井 智子佐藤 真由美道 健一
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1995 年 36 巻 2 号 p. 218-227

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抄録

舌部分切除後に構音障害を示した1症例に対して舌接触補助床 (PAP) を装着して構音訓練を行い, 発語明瞭度を用いて評価したところ, 以下の結果を得た.
1.構音訓練はPAP完成後の術後4ヵ月から計13回 (5ヵ月間) 行った.
2.訓練は最も明瞭度の低下している/k/音から開始し, 音節, 単語, 文章の順で系統的訓練を行った.
3.明瞭度は訓練前には55.2%であったものが, 訓練後には76.2%となり, この変化は訓練による治療効果と考えられた.
4.舌接触部位別では, 明瞭度はいずれの部位でも10%以上の改善が認められたが, 特に訓練音/k/を含む舌後方音において著しい改善が得られた.
5.構音様式別では, 特に破裂音および弾き音で20%以上の著しい改善が得られた.
6.舌切除患者に対するPAPと構音訓練の併用は有効であることが明らかとなった.

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