音声言語医学
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一重度難聴児の言語発達
―母子のやりとり―
大森 千代美野中 信之中川 弘川野 通夫中島 誠
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1995 年 36 巻 2 号 p. 256-264

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抄録

言語発達が良好だった重度難聴児1例のことばの発達を, 療育場面のビデオテープ12本と指導記録簿, 母親から聞いた生育歴をもとに検討し, 難聴児のことばが育つには何が大切かを考察した.対象は初診時年齢1歳3ヵ月, 平均聴力レベル約110dB, 現在普通学級4年生在籍中の女児.
療育開始時から母子は視線や表情, 動作などからお互いの意図を読み取り, 動作的にやりとりしていた.指導者は子どもが始めたことに合わせて応じるとやりとりが続くことを母親に示した.1歳5ヵ月, 給食の準備のようすを再現し, 象徴遊びが始まった.1歳6ヵ月, ことばを使い始め, 2歳3ヵ月, 身振りとことばで母親と短いやりとりができた.この症例を通して難聴児のことばが育つには, 以下のことが大切だと確認された. (1) 母子の間に情動的関係を育てる. (2) 子どもの認知を育てる. (3) 生活の中で, 身振りと表情, ことばでやりとりする.

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