音声言語医学
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聴覚障害児の動詞と活用の獲得
前田 知佳子広田 栄子田中 美郷
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1996 年 37 巻 1 号 p. 8-13

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抄録

当科で指導を行った15例の感音性難聴児 (4~6歳) を対象に, 今回作成した動詞語彙検査と動詞文末形式検査を行い, 聴覚障害児にとって獲得が困難な動詞の種類と活用 (文末形式) について検討した.被検児の言語学習年齢は4~6歳で, 平均聴力は50dB~120dBであった.動詞語彙検査では, 8種の意味領域 (対人関係, 移動, 社会現象, 動作, 認識, 自然現象, 感情, 物の状態) のうち社会現象の語と動作の語の得点が, 聴力正常児26例の結果より低かった.動詞文末形式検査では, 14種の文末形式のうち, 受動の複合動詞, 使役, 受身, 勧誘, 持続の複合動詞, 可能の文末形式の得点が低かった.聴力別検討では, 高度難聴児群 (80~120dB) は中等度難聴児群 (50~79dB) より両検査の得点が低かった.聴覚障害児の動詞の指導にあたっては, 聴覚障害児の獲得の順序性と学習の困難度に留意した体系性を備えた指導の必要性が示唆された.

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© 日本音声言語医学会
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