音声言語医学
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脳と音楽認知の障害
進藤 美津子
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1996 年 37 巻 4 号 p. 462-467

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抄録

脳の障害によって生じた音楽機能の障害である失音楽症 (amusia) のうち, 感覚性失音楽症の音楽認知の障害について, 従来の報告例および自験例から得られた知見について述べる.1) 音楽家の失音楽症にみられた音楽認知の障害の報告例では, 損傷部位は左の側頭葉と推定された.2) 一側の側頭葉切除例や脳血管障害例に行った音楽認知検査の報告や健常の大学生に行ったDichotic listening法による音楽認知検査の報告例などの結果から, 音楽機能は言語機能ほど一つの半球への側性化はみられていないこと, 音楽の認知に関しては両半球が関与していることが示唆された.3) 自験例の聴覚失認例ではいずれも音の強弱, 長短, 高低, 音色を正しく認知することができず, 音感が著しく低下しているため, メロディの認知も困難であったと考えられた.4) 音楽機能の障害を階層的にとらえるためには, 臨床的に有用な音楽検査の作成が今後の課題であると思われる.

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