音声言語医学
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失音楽 (amusia)
―表出面の障害について―
河村 満
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1996 年 37 巻 4 号 p. 468-473

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抄録

失音楽の主として表出面の障害に関して, 1.音楽と言語は脳内で別の機構を有するのか.2.音楽家と特殊な音楽能力を持たない人とでは音楽の脳内機構が異なるのか, 3.音楽機能は左半球に存するのか, 右半球なのか, 言語野に相当する音楽野は存在するのか, 4.失音楽の表出面の障害内容について検討した.
1.については, 古くから失語症を呈した音楽家の音楽能力を検討した報告がある.これらはいずれも音楽障害と言語障害とが並行しないことを示している.自験全失語2例では歌唱の異常がみられず, 言語障害と歌唱障害とが乖離していた.これらは音楽と言語が脳内で別の機構を有することを示唆している.
2.に関して, 音楽受容面についてはDichotic listening testでの検討がみられるが, 表出面での検討は乏しい.
3.については, 従来のいわゆる運動性失音楽を示したほとんどの症例は右半球病変である.さらに, それらの病巣局在は前頭葉と側頭葉とがあり一定しない.
4.に関して, 運動性失音楽として報告された症例の多くでは, 歌唱能力の障害はメロディー, ピッチにあり, リズムの異常はあまり認められない.受容面の障害を伴った自験側頭頭頂葉病変5例 (両側2例, 左2例, 右1例) でも同様の傾向がみられた.

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