音声言語医学
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音楽療治の立場から
貫 行子
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1996 年 37 巻 4 号 p. 474-479

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抄録

これまでに筆者の発表した音楽生理心理学的研究と音楽療法研究から, 次の3つを紹介する.
(1) 「鎮瀞的音楽と刺激的音楽に対する情動反応」を自律神経系の指標で測定すると, およそ対照的な反応傾向が示された.しかし音楽専攻生は鎮静化されにくかった.心理学的調査と生理学的反応との対応は, 刺激度に関しては一致し, 鎮静度に関しては不一致もみられた.
(2) 「反復音型の連続聴取による影響」は, 時間の長さによって知覚体制に変化が生じ (飽和ダイナミクスという) , 催眠を誘発したり, 行動変容をもたらす.
(3) 「痴呆症のための活動的音楽療法」を実践して脳波を測定すると, 徐波化していた痴呆脳にα波が産出されて活性化を示し, 一方, 不眠や緊張の強い患者には緩和に役立つことが示された.重度痴呆音楽療法を通じて, 患者はまず言語能力を, 次に古い歌の歌唱力を失い, リズム機能は最後まで残存することを見出した.

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© 日本音声言語医学会
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