音声言語医学
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音声障害の診断と治療
―内視鏡検査と喉頭顕微鏡下手術を中心として―
福田 宏之
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1997 年 38 巻 2 号 p. 216-223

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抄録

1970年代から系統化されだした音声外科は最近では日常普通に行われる臨床行為となっている.あらゆる臨床はその基礎的研究に支援されたものでなければならないが, この音声外科もこの間のたゆまぬ基礎的研究に裏付けられたものとなっている.その中核となるものはなんといっても発声時の声帯振動の解明にあるだろう.著者らの研究室では, X線ストロボスコピーが開発され世界で始めて声帯振動を前頭面から実画面として記録解析することに成功した.幾多の研究の結果, 声帯振動の本質は粘膜波動でtravellingwaveであるとしそれも遊離縁に有意なものとした.一方で声帯の層構造に対しても, 従来の粘膜―筋層に加えて粘液層を乗せた3層構造を提唱しこれらの観点から声帯に対処すべきとした.また診断ではstrobofiber-videogram, electronic laryngoendoscopeを駆使して粘膜波動の動態解明から声帯の物性判定が大切であるとして音声外科, 特に喉頭顕徴鏡下手術はどうであるべきか言及された.すなわち声帯遊離縁の粘膜の保護維持が肝要で決して瘢痕形成を招いてはいけないわけで, あくまでも粘膜の柔らかさを保つべきとした.そのためには手術操作の数が少なければ少ないほどがよく1~2回の鉗子操作で切除すべく喉頭鏡操作, 器具の選択から注意が必要と主張された.言葉をかえると, 常に小さな器具で頻回にあたかも注意深く精密に行っているようにみえる喉頭顕微鏡下手術は良くないということである.

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© 日本音声言語医学会
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